国内の動向

日本の課題と統合報告に期待される役割

大胆な金融・財政政策により、日本経済は好循環を生み出しつつあるものの、これを持続的な成長軌道に乗せるには、企業が「稼ぐ力(収益力、資本効率)」を高めることで持続的な価値創造を実現し、資金の拠出者が長期的なリターンを得られる仕組み、すなわち「インベストメント・チェーン」の全体最適化を実現することが重要と言われています。日本版スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードは、企業と機関投資家に対して実質的で建設的な対話を求め、とりわけ投資判断にESG等の非財務情報を考慮する受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)に着目が集まっています。とくに日本の場合、GPIFがPRI署名以降、年金積立金の運用において、ESGを適切に考慮する旨、公表したことにより、2017年は日本における「ESG元年」がいよいよ始まるとされています。
長期的な株式保有に資するという考え方が機関投資家において組み込まれつつあります。(別表参照)

日本
  日本再生戦略
日本再興戦略
「日本再興戦略」改訂2014
伊藤レポートの公表
スチュワードシップコードの開始
会社法の改正
「日本再興戦略」改訂2015
コーポレートガバナンスコードの開始
日本再興戦略2016
GPIFのPRI署名
未来投資会議
持続可能な開発目標(SDGs)推進会議
GPIF、国内株式投資を対象とした環境・社会・ガバナンス(ESG)指数を募集
GPIF、PRIボードメンバーに選任(水野CIO兼理事)
コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)
  経済産業省
  企業報告ラボ
コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会
企業財務委員会
CSR研究会
なでしこ銘柄の公表
ダイバーシティ経営100選
企業活力とダイバーシティ推進に関する研究
「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト
攻めのIT銘柄の公表
企業開示制度の国際動向 等に関する研究会
持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会
持続的な価値創造に向けた投資のあり方検討会
経営者・投資家フォーラムの設置
CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)
競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会
長期地球温暖化対策プラットフォーム「国内投資拡大タスクフォース」
株主総会のあり方検討分科会
株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会
持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会
金融庁
  日本版スチュワードシップ コードに関する有識者検討会
コーポレートガバナンスコード策定に関する有識者会議
ディスクロージャーWGの設置
スチュワードシップコード及びコーポレートガバナンスコードのフォローアップ会議
スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会
会計監査の在り方に関する懇談会
監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会
内閣府
  女性の活躍状況の資本市場における「見える化」に関する検討会
資本市場における女性の活躍状況の「見える化」促進に関する調査等
環境省
  企業の環境情報開示のあり方に関する検討委員会
環境格付融資に関する課題等検討会
機関投資家等の持続可能性を巡る課題を考慮した投資に関する検討会
環境情報開示基盤整備事業
環境報告ガイドライン・環境会計ガイドライン改定に向けた研究会
厚生労働省
  社会保障審議会年金事業の運営の見直し、積立金運用のあり方等
社会保障審議会年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班

IIRC Japan Networkでは、「日本における統合報告に関する実務上の論点―統合報告実務者意見交換会の議論を通じて出された意見―」を発表し、2015年度、2016年度の活動報告書を公表しました。本報告書のまとめの冒頭では、次のように述べられています。統合報告書実務者意見交換会の報告と議論および報告書での議論内容の整理を通じて、企業が作成している自主アニュアルレポートの多くが投資家の期待に十分に応えきれていないことが浮き彫りとなり、一方の投資家も、企業に対してどのような情報を求めているのか、自らの考え方を十分に伝えてきれていなかった、としています。こうも続けます。問題解決のためには、企業と投資家が相互理解を深め、中長期的な企業価値創造について「対話」を行い、企業は企業価値評価に有用な情報が何であるのかを主体的に投資家から引き出し、積極的な情報開示する姿勢を持つこと、一方、投資家は、企業価値評価に必要な情報は何であるのかを企業に積極的かつ具体的に示す努力が必要と、求めています。当面は日本経済を持続的な成長に資するものにするためにも、企業と投資家の実務的なコラボレーションによる日本版統合報告の深化の責任は極めて重いと言えましょう。

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